【緊急】業界関係者はネット広告にどう向き合うべきか。
最近ネット広告やアドテクを卒業し、企業の経営や戦略やマーケティングのアドバイザーの会社を創業したのですが、昨日のクローズアップ現代(クロ現)を見てどうしても書かねばと思い書くことにしました。
残念なことに非常にセンシティブな問題なのでFBやツイッターでも業界関係者であるメインプレイヤーは何も書きません。(書いてあるのを見たら教えてください記事をupdateします)確かに誰もが見れる場所で「表明」するのはとても難しい問題だからです。なので業界関係者であった僕が一石を投じたいと思います。
今週のノートが有料の予定だったので最後に少しだけ有料ゾーンは作らせてもらいますが一般の方はそこを読まなくても十分にわかります。業界関係者の人はヒントも少し書きました。必要があれば読んでください。
クロ現の指摘(要約)
消費者がアダルトサイトを見た時などに、ブラウザーの裏側で見えないまとめサイトが立ち上がり(クロ現では「飛ばし裏広告」と命名)、そこに大量の広告が掲載されている。実際見られることはない場所だが掲載はされ、課金もされている。その状況を大手広告主、大手代理店、大手アドネットワークなどの広告流通会社ですら把握出来ておらず、そもそも広告がどこに出ているのかを把握するすべがないと(一部の関係者は)言っている。
アドネットワークというメディアを束ねたネットワークを介すことで広告を出しているがそこが不正の温床になっている。
一部広告主はIASなどの不正検知システムを使い、不正が見つかるとそこへの広告配信を止めていることで不正を防いでいる。
僕とアドテクの関係
2013年からアドテクノロジー会社のスケールアウト(現:Supership)の役員をやっていました。それ以前にもアドテク企業の役員経験があります。
このように共著でアドテクノロジーのスタンダードになった(多分一番売れている本たち)を3冊執筆し、業界へノウハウの貢献などを行って来ました。
今は内容が古くなってるのであえてアマゾンへはリンクしてません。(出版社さんごめんなさい!)
ネット広告の良い点
ネット広告やそれを支えているアドテクノロジーは概念としてとても素晴らしいものです。マーケットを解放し最小粒度に在庫を解放することで、オープンに、誰もが簡単に広告を売り、広告を買うことができるようになるのです。TVCMのように誰もが広告を出せる訳ではないとどうしても大手が強い時代になりますが、インターネット広告はそれを仕組みとして解放し、小さい資本から広告が打てるようになりました。
ネット広告業界の課題
アドテクの概念はとても素晴らしいものですが、それをどう運用するかはその業界の人たちが考えなければいけないし、適切に運用出来なければ悪い方向にも行きます。今回は悪い方向へ向かってしまったということです。
ネット広告は誰でも広告を少量から出せる、メディアなら誰でも広告枠を作れば売れるという簡単さが仇となり、悪いメディアはどこかのメディアの記事からコピペしてメディアを作り、広告費をもらうためにだけ運用したりすることも可能で、実際にそれが事件になったこともあります。
オープンなマーケットというのは誰でも入れる分、不正をしたい会社も審査なく紛れ込むことを意味します。これは実は買い手が気をつければ防げるのですが現状はうまくいってません。
クロ現が取り上げる前からすでにこのような問題は「アドフロード」と呼ばれ広告詐欺を問題として来た訳ですがあまり対策はされてこず見過ごされて来ました。
この記事は2016年の1月8日に書きました。そしてこの記事を見た東洋経済の関田さんが連絡をくださって以下の記事が出たのが2017年4月17日です。
菅原氏は、「広告主は不正を暴くことにコストをかけるよりも、上位20%のトップティアのメディア以外は取引しないという意識が重要」という考え方を示すが、これは説得力があるだろう。実際、2015年ごろからは、PMP(Private Market Place)と呼ばれる広告取引市場が登場している。これまでのオープンなオークション方式のRTB(Real-Time Bidding)とは異なり、参加できるメディアと広告主が限定されていて、掲載先の品質担保が容易になっている。
もう1年以上前からこのような提言を行なっているにも関わらず、広告詐欺が自分ごとにならず見過ごされるには理由があるのです。
なぜ買い手は詐欺を見過ごすのか
そこには大きな問題があります。
ちょうど1ヶ月ほどまえのブランドサミットという大手広告主が集まるクローズドなイベントでもこの課題について討論し、僕も登壇しています。
広告を出稿する企業は何を目的に広告を出稿するのでしょうか?
それは当然「商品を売る」ためです。TVCMは全国規模で、しかも大量に広告を出すため商品が売れたか売れなかったかは販売データを見れば広告データと販売データが突き合わせができないものの、規模が大きいためある程度はわかります。
しかしネット広告はその規模が1/10以下であるため、販売データを見ても売れたかどうかがわからず、なんのためにやっているかを証明するのが難しいのです。その結果広告は安く大量に出せることが目的となり、「良質な場所で広告が出ているか」よりも「1回出すのにどれだけ安くできるか」が基準になります。販売データと突き合わせられないため、広告出稿担当の努力が1回広告を表示するのをできるだけ安くしようとなってしまうのです。
多分業界関係者の人も「そんな安いところに出したからって効果がいいわけない」と疑問には思っても、それを証明することが出来ないため、上司を説得も出来ず良いメディアへ広告を出すことが出来ません。TVが一番良い場所に大量に出せているのに、ネットは一番悪い場所を選び大量に出すのです。
インターネット広告には種類があり、純広(掲載場所と期間を指定)、アドネットワーク、各プラットフォーム、などあり今回のクロ現ではアドネットワークが問題となりました。広告主や代理店はそれ以外の手段もあるのにアドネットワークを避けて通れないのは「広告出稿担当の努力が1回広告を表示するのをできるだけ安くしようとなってしまう」からです。
社会から見られているネット広告のこれから
とかく業界の中で語られるとこの問題は先送りされがちです。なぜなら他の方法を作るのは面倒だからです。できれば誰も何も変えずに今まで通りに行きたいのです。すくなくても2016年から提言しているのに何も変わらないと思っています。
その中でも今度の10/4に業界のメインプレイヤーで討論形式で話あうこの機会は業界の転換点になるかもしれないと思っています。
すでに社会からネット広告は目をつけられていると言っても過言ではない状態なのです。そろそろ待った無しではないでしょうか?
業界と企業の経営者に向けて提言したいこと
ここから先は
¥ 500
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?